20年間勤めたマッキンゼーを辞して、3年間をGEで過ごした。再び外部から経営改革を支援しようと思い、ルートエフ株式会社を立ち上げた。ただ、これからすることを、果たしてコンサルティングと言うべきか、自らをコンサルタントと名乗るべきか、いろいろと考えることが多かった。コンサルタントとして歩んだ四半世紀の経験をもって、コンサルティングの良い点も悪い点も肌身で感じているからだ。
　コンサルティングに代わる呼称はなかなかみつからないが、次のような思いで、経営改革を進める経営者を外部から支援していきたい。

　経営は、どう説くかよりも、むしろイシュー（課題）をどう設定するかによって大きく左右される。たとえば、業務改善によって生産性を上げていくことで競合優位性を獲得できると考えるか、市場の中で1位か2位の事業だけに集中して企業の収益性を高めるべきと考えるか、によって取り組むべき解決方法が異なるのは明らか。
　イシューの設定は、個々のクライアント、そして個別の状況によって、違うはず。そのイシュー設定から、経営陣のお手伝いをします。
　それこそが、エグゼクティブのためのマネジメント・コンサルタントの使命だと確信しているからだ。

　イシューを個別に設定していくことで、検討しなければならない領域はボーダレス、つまり「何でもあり」が前提となる。必ずしもクライアントの既知の領域や、私にとって経験の豊富な経営コンサルティングと称する領域に、クライアントの求めるソリューションがあるわけではありません。むしろ領域の設定こそが鍵となったりもする。
　最近かかわっている案件も、国境を超えたアライアンスであり、商品開発からコミュニケーションまで一気通貫のマーケティング支援であり、役員候補者へのコーチングであったりします。
　経営陣がボーダレスで競合企業と戦うように、ルートエフというファームもボーダレスでイシューの解決に取り組むことを旨としている。

　ただし、ボーダレスの問題解決にあたっては、ひとりのプロフェッショナルの手に負えるものではありません。 　
　イシューごとにその解決にベストなトップ・タレント・チームを組成することによって、アプローチすることになります。チーム・メンバーは、それぞれ各分野で一流の実績を持つプロフェッショナルばかりです。それが、ホームページの各所でご紹介している仕事仲間になります。 　
　独立系コンサルタントであるがゆえに、ベスト・メンバーでクライアントに最高のバリューを提供していくことを目指します。

　私がコンサルティングの手ほどきを受けたマッキンゼー時代、半分以上は金融機関をクライアントにする仕事をしていた。その後GEに入ったのも、当時のGEのコンシューマー・ファイナンス部門は世界各地でリテール・バンクを立ち上げていたからである。私自身、GEという会社の力を借りて、日本の市場環境に合ったリテール・バンクを立ち上げてみたいと思っていた。しかし、消費者金融の過払い問題により、GE自身が日本での金融業を大幅に縮小し、私自身の転機にもなった。
　ルートエフ株式会社を立ち上げたおり、これまでのコンサルティングとは違う支援の仕方を模索したいと思いつつも、多くのクライアントは金融機関になるだろうと思った。そこで、「金融の本質を探りましょう」という意味でRoot of Finance、記号化して√Fとした。
　そうして、少しずつ仕事の幅を広げ、大阪府の特別参与になった。そのころ、大阪の四ツ橋にあるバー・メリケンジャップで飲んでいたところ、マスターに社名の由来を問われ得々と説明していると、なんと隣の酔客が割って入り「このFはFutureのFや」と呟いた。
　なかなかよい。私は直感した。それからというもの、記号化していたことも幸いして、「明日の礎を築きましょう」という意味であると説明するようになった。その方が、金融を離れてずっと視界が広がる。
　ただ、最近ではFortuneのFでもいいかもしれないと思っている。中国人にはきっと受けるのではないかと思う。でも、ちょっと宗教ぽっいか。それでも、そもそも縁起がいい名前だと、自分で改めて思う。
　いずれにしても、このFにはいろいろな思いが重なり合っている。重なり合ったFの中で、私も精一杯背伸びをして、成長していこうと思っている。